NO NUKE Ibaraki

原発事故から廃炉期へ…茨城の未来。

測定に関する石岡地区の状況と損害賠償

◆ 測定に関する石岡地区の状況

2011年6月に立ち上げた自主測定する茨城農民の会は20名で、ベクレルモニターというガンマ線測定器を共同で購入しました。
石岡市の中山間部にある八郷地区の有機の野菜を中心に、栽培に必要な鶏糞や落ち葉や草木灰など1200以上の検体を測定してきました。

現在は、原木シイタケ、山菜、タケノコなどいくつかの食品に福島原発由来のセシウムが出ます。
その他の生産物はほぼ0ベクレルです。土壌や堆肥は最大3-400、灰は今でも最大1000ベクレル近くセシウムが残っている状態です。
米は基本0ベクレルですが、前年出ていなかったものが翌年出たケースもあり、原因はよくわかりません。検体の数は減ったものの今でも時々測定の依頼があります。

事故から一年半後の2012年末に、石岡市役所は、ここ八郷地区に日立アロカメディカル社の測定器を設置しましたが、今でも食品しか受け付けず、測定ができなかった人たちは当時かなり汚染の高かった落ち葉や灰をすでに畑に投入してしまったかもしれません。


◆ なぜ私たちが高価な測定器を購入し放射線測定をしなければならなかったのか

2018年10月、私たち農民の会20名が東電に申し立てた測定器購入費と運営費の賠償がADRによって認められました。直接請求も含めると4年以上かかりました。
その申立てがほぼ全面認められたのは、有機栽培と提携という特別な理由からでした。
無農薬、無化学肥料、そして提携といわれる直接契約の定期便で販売する方法で、顧客は食に対する意識が高く、農作物が安全・安心である証明は農薬のテストでもしないかぎりわからないのですから、信頼関係こそが営農を継続させるのです。
ですから、100ベクレル以下は安全だとか、茨城県の抽象的な放射能の汚染状況や数値などの情報から「石岡市の野菜は安全だ」と納得できるものではありません。

東電は私たちの会の名前の「自主測定する」の意味を、「勝手に測定した」と曲解し、私たちの測定と原発事故がなんら関わりがないと最後まで支払いを拒否してきました。
東京のリンク総合法律事務所の弁護士と被災者支援弁護団の弁護士が代理で作成した申し立ての主張は次の通りです。

「ここで「自主」と命名したのは,行政の対応を待つだけでなく,自主的に放射線測定を行うことが顧客との信頼関係回復・維持にとって重要と考えられたからである。
 仮にこの時点で放射線測定を行わなかった場合,申立人らが顧客に農産物を供給していくことは非常に困難であったと言わざるをえない。なぜなら,顧客に放射性物質の危険性に対する不安がある中で,放射線測定すらしないまま顧客に農産物を供給することは,信頼関係を傷つけることに他ならないからである」
結果として会員のうち3名は遠方へ移り、1名は離農を強いられました。申立人の中で自給菜園家3名にも賠償金が支払われます。私たちはこのように主張しました。

自己実現、すなわち自分の人生を自分らしく生きていくための労働の意味は、決して「お金を稼ぐこと」という意味に限定されるものではない。自給自足のための活動も労働の一つであり、人の生業である。放射線の影響により、自らの生業を脅かされた自給菜園家も、営農者と同様に賠償されるべきである。」

私たちが有機農業、直接契約という風評被害を受けやすいという理由、それはADRや東電にとっては経済活動の特殊例という理由ですが、同じく自給菜園家の申立てが認められたのですから、本来ならば福島県をはじめ近県やホットスポットのある地域の全ての人が、賠償される対象であるべきです。

原発事故という暴力は、経済面だけではない、肉体にも精神にも大きな傷を与え、今でも見えない状態で潜伏しているのです。時々顔を出し、そして私たちは忘れてもいるのです。
このような暴力の元では、国民全員が測定をし自己防御しなければならない状況におかれていると思います。同時に測定器を買うことは、原子力ムラや武器産業に加担することにもなるという諸刃の剣であることも考えなければなりません。

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